UTokyo bicycle racing team

インカレロード。他に重要な試合は数あれど、やはり何かが特別なこの試合。

この夏は全くバンクに入ることなく、全ての力をロード対策にあててきた。主要な課題は修善寺の厳しい傾斜と延々と続くインターバル。もともと登坂は得意だから、できればペースアップだけでかたをつけられるぐらいのパワフルさを身に付け、そしてゴールまでに切り離しができなかった場合に備えて福島では登りゴールスプリントを徹底的に対策しておいた。それがまさにあたった試合。

試合前に作戦と方針をチームメイトに伝え、スタートラインに立った。自分は勝つためにここにいるということを実感する。良く集中できている。心静かだ。

序盤逃げが決まってしばらくするまで極めて集団は不安定だった。集団内各所でふらついてはする人や、チェーン落ち、落車寸前などなど・・・が起きて、非常におそろしい状況。もともと地足のない人間が無理やりついていこうとしているので、危険な走り方になってしまうのだろう。2周目ぐらいの1号橋登りで今日最後にして最大のピンチ(笑)だった危機が訪れる。いきなり京大の人がふらついて落車しかけ、僕におもいっきりよりかかって体制を立て直した。僕が持ちこたえられなかったら集団落車だ。危ない。

逃げの面子を確認する。内間選手、湯浅選手、などに混じって東さんが入るのを決まるときに確認。完璧である。このまま当分認めることにして集団内に潜む。

下りの落車に気をつけながら、補給をともかくこまめにとっていく。とりにいくのは高木さんと三谷さんに依存して体力を使わない。(終盤に一回だけボトルを自分でとった)本当にありがたい。

主要な動きとしては、14周目頃の法政の集団逃げの潰しはちょっと出遅れたが、越海選手が日大メンバーに指示をとばし、さらに鹿屋の野口選手がパワフルにチェックへ入ったのでそこと協力して軽くつめる。大久保選手が主に引いたのでちょっと疲れました、という顔をしている。青柳選手と一瞬目が合う。やはりこの勝負、彼と戦うのが本番になるだろうという直感する。

ペースは遅い。去年と比較すると中盤過ぎても驚くほど人間が残っている。しかしこのまますんなりと集団でゴールまで行くわけにもいかない。10周目後半からコントロールは法政、高木さん、中央1人ぐらい。東さんが集団に戻る。

あっけなく20周を通過。一度縮みかけた差が再び開く。内間選手のしぶとさに若干焦る。しかしここからが本当の勝負である。徐々に集団前に上がり、登坂の先頭に立つ。一定ペースでぐんぐんと踏んで、集団を休ませない。僕以外には法政のアシスト陣がよく頑張っている。青柳選手や早川選手もローテに入ってきた。日大は人はいるがあまり引かず。鹿屋は人を減らし(特に伊藤選手がいなくなっている)余裕を失っている。いよいよ勝負が始まる兆候が出ている。

逃げを吸収した。カウンターアタックは時間の問題。1号橋登りで青柳選手が仕掛けたのに反応。これに追加して踏み、まずは2人で抜け出す。そして早川選手ら3人を待ち、これが今回の最終便となった。

西薗、青柳選手、早川選手、野中選手、福田選手、高橋選手の先頭集団が形成された。ほぼ予想通り。

ローテーションも気持ちよくまわる。1名の例外を除いて。日大の高橋選手は「自分は後ろを待つから」といって加わろうとしない。もうこの展開で後ろに追いつかせるわけがないだろう、といってやったが、日大の伝令からくる指示も「引くな」という指示。

残り3周ぐらいで福田選手が厳しくなる。彼はパワーがおそろしいのでこの段階で切るべき相手。僕は主要な登りできりきりペースを上げて他の足を削りにいく。基本的にフェアにローテーションを行う。

残り2周、1号橋登りで野中選手がアタック。それまで切れかけていたのでびっくりしたが、アタック後ペースを戻したタイミング的に長続きはしなさそうだと踏んで、法政の2人と落ちついて吸収する。この完璧に勝負が決まった時点になっても(結局最後まで)日大の高橋選手は引こうとしない。もはや勝負をあきらめ、大学対抗のポイントを入れに来ているものと解釈していた。もしくは足がないか。

ラスト1周に入る秀峰亭も徐々に紐をしめつけるごとくペースを上げる。結構効いているようだ。

そこからは淡々と回し、最後の秀峰亭への道へ入った。驚異的なことに野中選手が一度切れてから復帰しかけているが、さすがにこれはもう仕掛ける力は残っているまいと踏んで放っておく。とすれば、これは完全に法政2人との勝負だ。彼らはいつも気持ちの良い力勝負をしてくるので、勝っても負けても悔いはないと思った。

全く一度も引かなかったような選手は当然ゴールスプリントに絡む資格はないし、もしそういうことをする選手・チームは集団から今後信用を失うだろう。

福島で身に付けた登りゴールスプリントの全てを思い出す。タイミングをはかる。青柳選手が遅れた。早川選手のために積極的に牽引を引き受けていたから最後を託したのだろう。早川選手に集中する。

と・・・ピンク色がかけていって目を疑った。高橋選手だ。大学対抗ポイントの話は分かるが、1位狙いは度を越している。

早川選手が追撃をかけないのを確認後、下ハン必殺のダンシングで瞬時に反応した。勝利にふさわしいのはこの選手ではない。怒りと勝利への渇望。ここで負けたら一生後悔するに違いない。並んで、抜く!

勝利を確信し、両手を放す余裕はなかったので片手ガッツポーズ。そして叫んだ。

ゴール後、東さん、高木さん、三谷さんと力を出し尽くしたことを讃えあう。しかし、本当にみんなを使い切ってしまった。高木さんや東さんは普通に集団で潜んでいれば完走は楽だったに違いないのだが・・・。最後のインカレまで働いてもらってしまった。本当はものすごく完走して順位をつけたかったのだと思う。本当にありがとうございました。

前の晩は準備もろくすっぽせずに早々眠っていましたが、そのことに文句も言わず、重い荷物を背負ってくれたり、補給をくれたり気を使ってくれたチームメイトのみんなには、普段はなかなかいえませんが、感謝してもしきれません。

OBの皆様、たくさんの応援を本当にありがとうございました。声援はなによりの励みでした。かっこいいところを見せることができて本当に良かったです。

そしてほとんど毎試合僕らの面倒を泊まりがけで見てくださり、相談に乗ってくださる監督には頭が上がりません。

他にも数えきれないほどの支援からこの勝利は生まれました。試合は終わってしまいましたが、写真などからこの僕らの力の結晶を心ゆくまで楽しんでください。