UTokyo bicycle racing team

ツール4日目の最終報告
ツールド北海道4日目(第5ステージ)、前日の全てを消耗し尽くした落車にまつわる出来事は、身体もさることながら、精神をも完全に蝕んでいた。スタート前の写真を見返してみても覇気がない。朝から細川さんやメディカルの方の力をかりながら傷を処置するが、あれほどの傷が一日でどうなるわけでもなく、とにかく走る体制をつくることに集中する。幸いに機材などは、チームの完全なサポートのおかげでなにも考える必要がなかった。ただ自分の身体と気持ちとに向かい合えばよかった。ひたすらに気持ちのよいトマムの空気を吸い込みながら、出走するころにはある種のあきらめの様な気持ちを胸に抱き、同時にそのあきらめから開き直ることができた。東さんと高木さんの本当にくやしそうな表情がときおり胸に浮かんだ。絶対に僕が終るわけにはいかない。

今日こそは無事に完走できますように。

下り基調、集団のストレスはあるものの、逃げが決まった後は気楽なペースでプロトンは進行した。先頭で引く分には十分大変だろうが、中にいるぶんには安全だ。一人になる様な場面をつくらないことに集中する。前の日にエンデカの真鍋さんから落車の原因についてずばっと「まわりが見えてないんじゃないの」と切ってすてられたのがずっしりきて、これまでと視線の使い方を意識的に変化させ、いろいろと試してみていた。そうやっていたらあるとき、ふっとなにかがつかめて(実は結構言語化できるけど)、集団内のストレスがほとんどなくなり、ついていくのも楽になる時がきた。そこからはリラックスして、ペースの上がる登りでもするすると前にいって、安全圏をキープし続けられた。結論としては最初のKOMが一番厳しいものだったようだ。それから横風もかなり危険だということを途中思い知った。(中切れができた)
補給も初めてつつがなく終わり(初日はこけて、二日目は手間取りすぎて遅れた)、最後までメイン集団でなだれこむ。爆風の吹く平原をプロトンは高速で抜ける。一度飛び出してみたが、20秒でつかまった。失笑としかいえないアタックだが、記念にはなった。
ゴールスプリント直前になると各チームの列車がごんごん前に競り上がってきて、虚をついて飛び出そうにも全体のペースが速すぎ、自分がお呼びでないことを早々に悟ると、タイム差だけつかないように後方で食らいついていた。ゴール間際には鹿屋の選手がぶっ倒れているのをみて、判断が正しかったことを認めつつ、(それから狩野選手におこられつつ)しっかりとゴール。この時点でツールド北海道の総合成績がつくことが確定した。急に重荷が一つおりた気がして、空が美しく、広く感じられた。きっとこれからしばらくたって北海道というものを思い出す時に描く景色は、こんな景色を思い出すのだろう。

つかれたよ・・・・